BIR Form 2307(源泉徴収票)とは
フィリピンでは、主にサービスの取引が行われる際に、買い手が代金の一部を源泉税として差し引き、売り手の代わりにBIRへ納税する制度があります。これをExpanded Withholding Tax(以下EWT、拡大源泉税)と呼びます。例えば取引金額が₱100,000でEWT税率が10%の場合、買い手が₱10,000を源泉徴収してBIRに納税し、売り手には₱90,000が支払われます。
BIR Form 2307は、この「いくら源泉徴収してBIRに納めた」という事実を証明するために、買い手が作成して売り手に交付する書類です。BIR Form 0619EやBIR Form 1601EQといった他の申告書類はBIRへの申告・納税に使いますが、BIR Form 2307はBIRへ直接提出するものではありません。買い手から売り手へ渡す書類である点が、この書類を理解する上での出発点です。EWTの詳細については、別記事「拡大源泉税/控除可能源泉税」をご参照ください。

なぜ重要な書類なのか
BIR Form 2307が重要な理由は、売り手にとって法人税申告時の税額控除に直結するからです。EWTは「法人税の前払い」として設計されています。売り手は四半期・年次の法人税申告(BIR Form 1702Q・BIR Form 1702)の際に、買い手から受け取ったBIR Form 2307をもとに、源泉徴収された金額を法人税額から控除できます。取引のたびに手取りが減っていた分が、後から法人税から差し引かれる形で戻ってくる仕組みです。
裏を返すと、BIR Form 2307を回収できていなければ税額控除が受けられず、本来戻るべき金額がそのまま損失になります。損益に直結する問題であり、軽視できない書類です。
買い手にとっても、EWTの源泉徴収とBIR Form 2307の発行は法律上の義務です。怠った場合はペナルティの対象となります。
買い手がすべきこと
適用するEWT税率の確認
税率は取引の性質や売り手の形態・規模によって異なります。請求書にEWT税率とNet Payable(実支払額)が明記されていれば、その内容に従って源泉徴収するのが基本です。記載がない場合は、売り手に税率を確認してください。それでも判断がつかない場合は、専門家に相談することをお勧めします。誤った税率を適用した場合のペナルティは買い手側が負うことになるため、不明な点は事前に解消しておくことが重要です。
BIR Form 2307の作成・交付
源泉徴収を行ったら、四半期単位(売り手から都度発行を要求される場合はそれに合わせて対応)でBIR Form 2307を作成し、売り手に交付します。PDFと電子署名でも有効なため、原本の郵送は必須ではありません。
売り手がすべきこと
売り手として最も重要な対応は、BIR Form 2307の回収です。請求書を発行する際に、あわせて発行を依頼するのが基本的な流れです。
ただし実務上は、買い手が自主的に発行してくれないケースも少なくありません。回収忘れが積み重なると、税額控除できない金額が増え続けます。法人税申告のタイミングで慌てて回収しようとしても、相手が応じてくれないケースもあります。請求・支払業務の中にBIR Form 2307の回収を組み込む形で、仕組みとして管理することが現実的な対策です。
おわりに
BIR Form 2307は、発行・回収ともに手間がかかることから後回しにされがちですが、適切に管理できているかどうかが法人税の実質的な負担額に直接影響します。フィリピンの税務実務に不慣れな段階では特に、漏れが生じやすい書類です。BIR Form 2307の運用も含め、フィリピンの税務・経理に関するご相談は、お気軽に弊社までお問い合わせください。