BSP登録とは

BSP登録とは、Bangko Sentral ng Pilipinas(フィリピン中央銀行、以下「BSP」)に対して、外国からの投資やローンを届け出る手続きのことです。登録が完了すると、BSP Registration Document(以下「BSRD」)と呼ばれる登録証書が発行されます。

この手続きは義務ではなく、あくまで任意の登録です。しかし、フィリピンの銀行を通じて外貨を購入し、配当や利益を本国に送金したり、投下した資本を回収したりする場合には、このBSRDがなければ銀行が外貨売却に応じないケースが大半です。実務上は「お金を持ち込む際ではなく、持ち出す際に必要になる書類」と理解するとわかりやすいでしょう。そのため、将来の本国への利益送金・資本回収を見据えれば、BSP登録は事実上必須の手続きです。

BSRDがなければどうなるか

BSRDを取得していない場合、フィリピンの銀行から外貨(日本円やUSドル)を購入することができません。配当の本国送金や出資金の回収をしようとしても、銀行窓口で「BSRDを提示してください」と言われ、手続きが止まってしまいます。

もちろん、自己保有の外貨(銀行経由で購入しない外貨)を使って送金すること自体は制度上不可能ではありません。ただし現実的には、これだけの外貨を常時手元に確保している企業はほとんどなく、実質的な障壁となります。

また、BSP登録には申請期限があります。外貨の送金日または資産移転日から1年以内が原則の申請期限です。この期限を過ぎると、遅延申請として扱われ、ペナルティ手数料が発生します(後述)。送金・出資の直後に申請手続きを開始することが、実務上の鉄則です。

BSP登録の種類

BSP登録が必要となる取引は、大きく以下の4種類に分類されます。

直接外国投資(Foreign Direct Investment)

フィリピン法人への株式引受・増資・既存株取得など、直接的な出資を伴う取引が対象です。非上場・上場を問わず、外国からの出資があれば登録の対象となります。申請はBSP本体(Investment Operations Department)に直接行います。

フィリピンに進出した日系企業の多くは、この直接外国投資の登録が最初の接点となります。

上場株式への投資

Philippine Stock Exchange(フィリピン証券取引所、以下「PSE」)に上場している銘柄を購入する場合が対象です。この場合は、証券会社またはカストディアン銀行を経由した申請となるケースが一般的です。

外国からのローン(Foreign Loans)

フィリピン居住法人が外国から借り入れをする場合もBSP登録の対象となります。親会社や関連会社からのインターカンパニーローン、外部金融機関からの借入などが含まれます。

なお、外貨を購入して返済する予定のローンや、政府保証を伴うローンなどは、登録に加えてBSPの事前承認が別途必要となるケースがあります。この点はローン契約前に確認しておくことが重要です。

その他(ペソ建て投資商品等)

非居住者が政府証券・ペソ定期預金・ペソ建て債券などに投資する場合も、条件によってはBSP登録の対象となります。

BSP登録手続きの流れ

申請期限とペナルティについて

前述のとおり、申請期限は外貨送金日または資産移転日から1年以内です。1年を超えた遅延申請には、BSRDの発行1件あたり₱10,000のペナルティが課され、さらに超過年数に応じて同額が加算されます。

ただし、新型コロナウイルス感染拡大(2020年以降)に伴う特別措置として、執筆時点ではこのペナルティが暫定的に免除されています。

主な必要書類

投資形態によって必要書類は異なりますが、直接外国投資の場合、一般的に以下の書類が求められます。

  • Certificate of Inward Remittance of FX(外貨受取証明)※最重要書類
  • 会社の基本書類(SEC登録証明書、定款、AOI等)
  • 株主構成を示す書類(GIS等)
  • 投資に関する取締役会決議書
  • (ローンの場合)ローン契約書、返済スケジュール等

申請ステップ

申請の流れは大きく以下のとおりです。

  1. 必要書類の収集・整備:上記書類を準備します。不備があると差し戻しが発生するため、チェックリストを事前に確認することが重要です。
  2. BSPへの提出:直接投資の場合はBSP本体(Investment Operations Department)に対して、BSPの専用システムを通じて提出します。ポートフォリオ投資の場合はカストディアン銀行経由となります。
  3. BSPによる書類審査:内容の確認・照会が行われます。
  4. BSRD発行:審査完了後、BSRDが発行されます。

所要期間の目安

新規の株式出資や親子ローンなど、取引内容がシンプルなケースでは、書類が揃った状態でBSPの審査自体は1~2カ月程度です。書類の準備期間を含めると、全体で2〜3か月程度を見ておくのが一般的です。

一方で、段階的な出資(複数回の増資)、種類株式(優先株など)、非居住者口座を通じた再投資など、取引内容が複雑なケースでは、BSP側の審査に相当の時間がかかります。このような特殊な投資形態では、半年〜1年程度を要するケースも珍しくありません。

おわりに

BSP登録は、フィリピンへの投資や貸付を行う際に早い段階で着手すべき手続きです。地味に見えますが、将来の配当送金・資本回収の可否を左右する重要な書類であり、取得を忘れたまま数年が経過してしまうケースも実務上少なくありません。

特に複雑な投資スキームでは審査に相当の時間を要するため、早期の相談・申請着手が重要です。BSP登録の手続きや必要書類についてご不明な点があれば、お気軽に弊社までご相談ください。