本記事では、フィリピンの産休・育休制度の基本と実務上の注意点を解説します。
産休(Maternity Leave)
取得日数と対象
フィリピンの産休制度はExpanded Maternity Leave Law(Republic Act No. 11210)に基づき、SSSに加入するすべての女性労働者が対象です(雇用形態不問)。取得日数は以下の通りです。
- 通常の出産(正常分娩・帝王切開を問わず):105日間(有給)
- シングルマザー:上記に加えて15日間追加(合計120日)
- 流産・死産・人工妊娠中絶:60日間(有給)
- 無給延長:産休終了後、最大30日間
なお、105日のうち最大7日間を子どもの父親に譲渡することも可能です。
給付の仕組みと雇用主の対応
産休中の給付はSSSから支払われます。給付額は直近の平均日額賃金をもとに算出されますが、SSSの給付上限額が従業員の実際の賃金を下回る場合、雇用主がその差額(salary differential)を補填する義務があります。実務上は雇用主が一旦立替払いを行い、後日SSSへの申請で精算する流れです。
SSS給付を受けるための要件
産休給付をSSSから受け取るには、出産・流産の「学期(semester)」の直前12ヶ月以内に3ヶ月以上のSSS拠出実績が必要です。拠出が不足している場合、雇用主が全額負担となります。また、産前に届出を済ませていないとSSSからの精算が受けられないため、従業員から通知を受けたら速やかにSSSへ届け出ることが重要です。
男性育休(Paternity Leave)
育休はPaternity Leave Act of 1996(Republic Act No. 8187)に基づく制度で、婚姻関係にある男性従業員が対象です。配偶者の出産・流産につき7日間の有給休暇を取得でき、最初の4回まで適用されます。取得要件は、出産時に配偶者と同居していること、かつ雇用中であることです。育休は出産日から60日以内に取得する必要があり、未取得分を現金に換算することはできません。
**産休との最大の違いは、育休中の給与は全額雇用主が負担する点です。**SSSへの精算申請はなく、雇用主がそのまま費用を負担します。
おわりに
産休・育休の手続きは、従業員への適切な対応とSSSとの精算管理が重なる複合的な実務です。手続きの進め方や給付計算でご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。