RMC No. 47-2026とは – 発令の背景

2026年5月19日、BIRはRMC No. 47-2026(以下「本通達」)を即日発効で公布しました。本通達は「BIRへの事業登録の閉鎖および取消における簡素化・合理化ガイドラインの規定」を趣旨とし、Ease of Paying Taxes Act(納税容易化法)の実施措置の一環として発令されました。これまでBIR内でも担当RDO(管轄税務署)ごとに対応がばらついていた閉鎖手続きの要件と手順を標準化し、納税者の負担を軽減することを主な目的としています。

適用対象は、個人・法人を問わずBIRに登録されているすべての事業者です。国内法人・外資法人の別、居住・非居住の別を問わず適用されます。

なぜBIRがボトルネックだったのか

フィリピンで設立した法人を閉鎖・廃業する場合、BIRへの税務登録の取消をはじめ、SECへの法人格の解散申請、SSS・PhilHealth・Pag-IBIGといった社会保険機関への届出、DOLEへの労働関連の手続き、LGU(地方自治体)の営業許可証返納など、複数の機関にまたがる手続きを順次進める必要があります。

このなかでも特に時間を要してきたのがBIRの手続きです。SECへの解散手続きにおいては、方法によってBIR Tax Clearance(税務適格証明書)の要否が異なります。最も一般的な任意解散(債権者がいない場合)のルートではTax Clearanceの提出が求められており、この場合BIRの手続きが完了するまでSECの手続きが実質的に進められません。Tax Clearanceが不要なルートとして存続期間の短縮による解散(承認から1年以上先に期限を設定する場合)もありますが、いずれにせよBIRで時間を取られることが閉鎖手続き全体の長期化につながってきた主因であることに変わりはありません。

従来のBIR手続きは、必要書類一式を提出した後に、書類審査・納税状況の確認を経て、Tax Clearance発行まで数ヶ月、1年以上を要することも珍しくありませんでした。BIR手続きの長期化が、閉鎖手続き全体の長期化の最大の原因となっていた背景があります。

主な変更点と実務への影響

必要書類の削減と明確化

本通達により、BIRへの閉鎖申請に必要な書類が明示的に限定されました。基本的に求められるのは以下の書類です。

  • BIR Form No. 1905(登録情報変更・取消申請書)2部
  • VAT登録事業者の場合:期末棚卸資産リスト(商品・消耗品・資本財を含む)1部
  • 未使用の領収書・請求書・伝票類とその在庫リスト
  • BIRが発行した登録証(Certificate of Registration)、Authority to Print(印刷許可証)、Notice to Issue Invoice(請求書発行通知)、レジ機器・EIS関連の許可証など(原本)

代理人が申請する場合は、公証済みの取締役会決議もしくはSecretary’s Certificate(秘書役証書)が追加で必要になります。「必要なもの以外は提出不要」という原則が明文化されたことで、従来は窓口でのやり取りのなかで追加書類を求められ、手続きが長期化するケースが少なくありませんでした。この点が一定程度改善されることが期待されます。

Tax Clearanceの発行が最短3営業日に

今回の通達で最も実務的なインパクトが大きい変更点が、Tax Clearanceの発行期間の短縮です。

前年の売上が3百万ペソ(約800万円)以下、または廃業時の純資産が8百万ペソ(約2,100万円)以下のマイクロ規模納税者については、完全な書類の提出から3営業日以内にTax Clearanceが発行されます。未払いの税額がある場合は、それを解消した後3営業日以内の発行となります。

さらに重要な点として、マイクロ規模納税者は廃業時のMandatory audit(強制的な調査・確認手続き)の対象外となることが本通達で明示されました。これにより、要件を満たす事業者にとっては手続きの見通しが格段に立てやすくなります。

なお、前年売上が3百万ペソ超または純資産が8百万ペソ超の事業者、あるいはすでにLetter of Authority(税務調査通知書)が発行されている案件については、所定の確認・調査手続きの完了後にTax Clearanceが発行される扱いとなります。この点については、執筆時点で詳細な運用が明らかになっていない部分もあるため、該当する規模の事業者は専門家への確認を推奨します。

書類提出後はペナルティが積み上がらない

本通達Section 6では、完全な書類をRDOに提出した時点で、当該納税者の登録フォームが「deregistered(登録取消)」状態に変更されることが定められています。これにより、それ以降の申告漏れに係るペナルティが発生しなくなります。

従来は、閉鎖申請中であってもEnd-Datingという書類が発行されるまでの間は申告義務が継続するとされており、処理が長引くほどペナルティが積み上がるリスクがありました。この点が明確化されたことは、実務上の大きな前進といえます。

逆に言えば、廃業を決めたにもかかわらず、BIRへの届出を行わずに事業を停止した場合(放置)は、引き続き税務上の義務が課され続けます。これは本通達Section 7で明示されており、届出なく事業を停止することのリスクは従来と変わりありません。

日系企業への影響

今回の通達で最も恩恵が明確なのは、売上3百万ペソ以下のマイクロ規模納税者です。Tax Clearanceが最短3営業日で発行されるという変更は、このカテゴリに限定されます。駐在員事務所を除けば、多くの日系企業はこの基準を超えており、「手続き期間が劇的に短縮された」とは言い切れないのが正直なところです。

ただし、規模を問わず適用される変更点も見落とせません。まず、必要書類が明確に限定されたことで、従来のようにRDO窓口で担当者ごとに異なる追加書類を求められるケースが減ることが期待されます。次に、書類提出後はペナルティの積み上がりが止まる点は、処理期間が数ヶ月以上に及びがちな非マイクロ法人にとってむしろ重要な変更です。手続きを開始してしまえば、その後の申告漏れペナルティを気にせずに済むようになります。また、手続きの標準化によってRDO間の対応ばらつきが是正されることも、実務上の予測可能性を高める効果があります。

駐在員事務所や支店(Branch Office)については、本通達の適用対象(「国内外を問わず、BIRに登録されているすべての事業者」)に含まれており、書類削減やペナルティ停止の恩恵は受けられます。ただしSECへの手続きは法人の解散とは異なり、Withdrawal of License(営業許可の返上)という手続きになります。

閉鎖手続き全体の短縮という観点では、非マイクロ規模の事業者(多くの日系企業が該当)においては確認・調査手続きの所要期間が現時点では明確でなく、BIR部分がどこまで前倒しできるかは個々の案件によって異なります。今回の通達は確実に前進ではありますが、今後の運用がどの程度改善されるのか、引き続き注視したいと思います。

おわりに

RMC No. 47-2026は即日発効であり、現在閉鎖・廃業を検討している企業にもすでに適用されます。一方で、最終税務申告の提出・未払い税額の解消・未使用書類の処理など、手続きの細部は事業者の状況によって異なります。閉鎖を決めた段階で早めに専門家に相談し、スムーズなクロージングのための準備を進めることをお勧めします。フィリピンでの法人閉鎖・廃業手続きについて、弊社へのご相談もお気軽にどうぞ。

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