フィリピンは「入るより出るほうが大変」と言われる国です。法人の閉鎖には複数の政府機関にまたがる手続きを正しい順序で進める必要があり、途中で止まったまま数年が経過してしまうケースも実際にあります。
当社は、株式会社・支店・駐在員事務所の閉鎖に必要な一連の手続きを一括して代行します。すでに撤退を決めた企業だけでなく、「撤退すべきかどうか」の検討段階からのご相談もお受けしています。
フィリピンからの撤退が難しい理由
法人を閉鎖するには、設立時に登録したすべての機関で「登録を消す」手続きが必要になります。対応先は次のとおりです。
| 機関 | 主な手続き |
|---|---|
| SEC(証券取引委員会) | 解散申請(株式会社)または許可返上(支店・駐在員事務所) |
| BIR(内国歳入庁) | 最終税務申告、税務登録の取消、Tax Clearance(税務適格証明書)の取得 |
| LGU(地方自治体) | 営業許可証の返納、地方税の精算 |
| SSS・PhilHealth・Pag-IBIG(社会保険) | 雇用主登録の抹消 |
| DOLE(労働雇用省) | 人員整理に伴う通知・報告 |
| BSP・銀行 | 残余財産の日本への送金、口座解約 |
厄介なのは、これらに順序があることです。特にBIRのTax Clearance取得は従来から時間を要し、閉鎖手続き全体が長期化する主因となってきました。かつては「全体で3年程度かかる」と言われることが多かった領域ですが、近年は制度改善が進み、短縮化の傾向にあります。
最も避けるべきなのは、手続きをせずに事業だけ止める「放置」です。届出をしない限りBIRへの申告義務は続き、ペナルティが蓄積していきます。撤退を決めたら、手続きを正式に始めることがそのまま損失の止血になります。
閉鎖手続きの主なルート
法人形態によって、SECでの手続きと全体の難易度が変わります。
| 形態 | SECでの手続き | 特徴 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 解散(下記2ルート) | ルートの選択で期間が大きく変わる。残余財産の分配には清算手続きが必要 |
| 支店 | Withdrawal of License(許可返上) | 法人格の解散はないが、税務の手続きは株式会社に準じる |
| 駐在員事務所 | Withdrawal of License(許可返上) | 収益活動がないため税務がシンプルで、最も短期間で完了する |
株式会社の解散には、大きく2つのルートがあります。
- 任意解散(Voluntary Dissolution):SECに解散を申請する方法。債権者がいない場合の一般的なルートでは、申請時にBIRのTax Clearanceが求められるため、BIRの手続きが完了するまでSECが進められません
- 存続期間の短縮(Shortening of Corporate Term):定款を変更して会社の存続期間を短縮し、期限の到来をもって解散する方法。期限をSEC承認の1年以上先に設定すればTax Clearanceの事前提出が不要となり、BIRの手続きを並行して進められます
Tax Clearanceの取得が長期化しやすい実態を踏まえ、最近は存続期間の短縮ルートが主流となってきています。どちらが適切かは、税務ポジションや残余財産の状況を確認した上でご提案します。
なおBIR側の手続きは、2026年発効のRMC No. 47-2026により必要書類が限定され、書類提出後はペナルティが積み上がらない扱いが明文化されるなど、改善が進んでいます。詳細は記事「RMC No. 47-2026でフィリピン法人の閉鎖手続きは短縮されるのか」をご覧ください。
当社の撤退・閉鎖手続き代行サービス
SEC・BIR・LGU・社会保険3庁・DOLEにわたる一連の閉鎖手続きを、当社が窓口となって一括代行します。日本人担当者が進捗を日本語でご報告しますので、駐在員が帰任した後、日本本社から手続きを進めていただくことも可能です。料金は法人形態ごとの固定料金です。
| 対象 | 料金(VAT別) |
|---|---|
| 株式会社の清算 | ₱800,000 |
| 支店の閉鎖 | ₱800,000 |
| 駐在員事務所の閉鎖 | ₱500,000 |
閉鎖が完了するまでの間は税務申告や会計監査の義務が続くため、手続き期間中の経理・税務業務は経理代行パッケージ等で別途承ります(上記料金には含まれませんが、取引量が最低限ですので割引価格で対応します。)。すでに他の事務所へ経理を委託中の場合も、閉鎖手続きとあわせた移管が可能です。その他の料金は料金プランをご覧ください。
ご依頼から完了までの流れ
- 初回無料オンライン面談:撤退の背景と現状をうかがいます。撤退の是非や時期の検討段階でも構いません
- 現状確認・お見積り:登記・税務申告・納税の状況を確認し、適切なルートと概算スケジュールをご提示します
- ご契約・手続き開始:従業員の整理、資産の処分・回収、最終税務申告を経て、各機関の手続きを順次進めます
- 完了・残余財産の送金:すべての登録抹消を確認し、残余財産の日本への送金までサポートします
よくあるご質問
Q. どのくらいの期間がかかりますか?
税務ポジションや選択するルートによって差が大きいのが実情です。かつては全体で3年程度と言われていましたが、近年は制度改善により短縮化の傾向にあります。それでも株式会社・支店では年単位の期間を見込んでおくのが現実的です。駐在員事務所はより短期間で完了します。個別の見通しは初回面談時にご説明します。
Q. 手続き中も税務申告や監査は必要ですか?
必要です。BIRへの閉鎖申請書類が受理されるまでは申告義務が継続し、会計監査も閉鎖完了までの各年度について必要です。撤退コストは「手続き費用+完了までの維持費+人員整理の費用」の合計で見積もることをお勧めしています。
Q. 従業員の扱いはどうなりますか?
事業閉鎖を理由とする整理解雇であっても、30日前の本人・DOLEへの通知と、Separation Pay(解雇手当)の支払いが必要です。金額の考え方は記事「フィリピンの解雇手当(Separation Pay)の基礎」で解説しています。
Q. 閉鎖せず「休眠」にしておくことはできますか?
日本の休眠届のように、届出によって申告義務が止まる制度はフィリピンにはありません。事業を止めても、登録が残る限りゼロ申告・会計監査・SECへの年次報告などの義務とコストは続きます。さらに改正会社法では、5年間連続して事業を行わない会社をSECが遅滞状態(delinquent status)に置き、是正されなければ登録取消に至る仕組みが定められています。再進出の可能性が具体的にあるなら維持する価値はありますが、「閉鎖が面倒だからとりあえず放置」に近い休眠は、維持費を払い続けた末に結局閉鎖手続きをすることになりがちです。
Q. 清算以外の撤退方法はありますか?
株式譲渡による売却であれば、法人を存続させたまま撤退でき、清算より短期間で完了します。ただし買い手の存在が前提となるほか、譲渡益への課税や譲渡価格の妥当性など税務上の論点があります。またグループ内にフィリピン法人が複数ある場合は、吸収合併により清算によらず1社に統合する方法も選択肢になります。いずれも案件ごとの検討が必要ですので、面談時にご相談ください。
Q. 残余財産は日本に送金できますか?
設立時の外国投資がBSP(フィリピン中央銀行)に登録されていれば、銀行経由での送金がスムーズです。登録がない場合は事後的な対応の検討が必要になります。詳しくは記事「フィリピンのBSP登録|配当や資本金償還のために必要な手続き」をご覧ください。
おわりに
撤退は後ろ向きな決断とは限りません。維持コストの垂れ流しを止め、経営資源を他の市場に振り向けるための、前向きな経営判断でもあります。手続きが複雑だからこそ、正しいルートを最初に選ぶことが期間とコストを大きく左右します。
撤退を決めた企業はもちろん、「このまま続けるべきか」という段階のご相談もお受けしています。初回無料のオンライン面談をお気軽にご利用ください。