「0%」と「免税」は似て非なるもの
VATには、12%が課される通常の取引のほかに、Output VATが発生しない取引があります。その代表が、Zero-Rated(0%課税)とExemption(免税)です。どちらも「売上にVATが乗らない」という見え方が同じため、実務でしばしば混同されます。
しかし、この二つは性質がまったく異なります。最大の分かれ目は、仕入の際に支払ったInput VATをどう扱えるかという点にあり、ここを取り違えると、損益やキャッシュフローに直接影響します。本記事では、両者の違いを、Input VATの扱いを中心に整理します。VATの基本的な仕組みについては「これだけは押さえたいVATの基本」をあわせてご覧ください。
Zero-Rated VAT(0%課税)とは
Zero-Rated VATは、VATの課税対象ではあるものの、税率が0%とされる取引です。課税取引である以上、本来はVATの枠組みの中にありますが、適用される税率がゼロのため、結果としてOutput VATは発生しません。
代表的な例としては、フィリピン国外への直接の輸出や、一定の要件を満たす輸出志向企業への販売などが挙げられます。どの取引が0%の対象になるかは法令や通達で定められており、改正もあるため、適用にあたっては執筆時点の最新の取り扱いを確認する必要があります。
ここで押さえておきたいのは、Zero-Ratedはあくまで「課税取引」であるという性質です。この点が、後述するInput VATの扱いを分ける鍵になります。
VAT Exemption(免税)とは
一方のVAT Exemption(免税)は、そもそもVATの課税対象から外れている取引です。Zero-Ratedが「課税対象だが税率0%」であるのに対し、免税は「課税の枠組みそのものの外にある」という点で根本的に異なります。
代表的な例としては、原材料の状態の一定の農水産品、教育サービスや医療サービス、年間売上が一定額(執筆時点では300万ペソ)以下の非VAT登録事業者の売上、一定の条件を満たす住宅の賃貸などがあります。これらの範囲や金額の基準は法改正の影響を受けやすいため、個別の判断にあたっては最新の規定を確認することをおすすめします。
最大の違いはInput VATの扱い(資産か、原価か)
0%と免税の最も重要な違いは、仕入の際に支払ったInput VATを回収できるかどうかにあります。
Zero-Ratedは課税取引であるため、その売上に対応する仕入のInput VATは、控除または還付の対象になります。Output VATがゼロでInput VATだけが残る場合、その超過分は還付申請によって取り戻すことができ、いわば回収可能な「資産」として扱えます。超過したInput VATの取り扱いについては別記事「超過Input VATの繰り越しと還付申請」をご覧ください。
これに対して免税取引は、VATの枠外にあるため、その売上に対応する仕入のInput VATは控除も還付もできません。回収する手段がないため、支払ったInput VATはそのまま回収不能な「原価」となり、最終的には販売価格に転嫁されることになります。
簡単な数値でイメージしてみます。仕入価格1,000、それに係るInput VATが120の商品を販売するとします。この販売がZero-Ratedであれば、Output VATはゼロですが、支払った120は控除・還付の対象となり、手元に戻ってきます。コストは実質1,000です。一方、同じ商品の販売が免税であれば、120は取り戻せず原価に乗るため、コストは1,120になります。同じ「VATが乗らない売上」でも、手元に残る負担はまったく異なります。
この違いからわかるのは、免税が常に有利とは限らないという点です。仕入に係るInput VATが大きい事業では、免税よりもZero-Ratedの方が、損益の観点で有利になることがあります。自社の取引がどちらに当たるのかを正しく把握しておくことが、コスト管理の面でも重要になります。
課税売上と免税売上が混在する場合のInput VATの振り分け
もっとも、実務で難しいのはここからです。課税(標準税率または0%)の売上と免税の売上の両方を行っている事業者では、支払ったInput VATを「どの売上に紐づくのか」で振り分ける必要があります。原材料のように特定の製品やサービスに直接対応する仕入であれば追跡できますが、家賃や光熱費、管理部門の経費といった共通の仕入は、特定の売上に直接結びつけることができません。こうした費用のInput VATをどう扱うかは、現場で頻繁に悩む点です。
この問題について、制度上は次のような考え方で処理します。まず、課税売上に直接対応するInput VATは控除の対象とし、免税売上に直接対応するInput VATは控除できない原価とします。そして、どちらにも直接紐づけられない共通の仕入については、課税売上が総売上に占める割合に応じて按分し、課税対応分のみを控除します。つまり、直接たどれる分は直接帰属させ、たどれない共通分は売上比率で機械的に振り分ける、という二段構えです。
この按分を行う際は、用いた計算根拠や売上区分の資料を整えておく必要があります。按分の基準は税務調査でも確認されやすい点で、合理的な方法に基づいていることを示せるようにしておくことが求められます。日々の記帳の段階で、仕入が課税売上・免税売上のどちらに対応するのかを意識して区分しておくと、四半期末の振り分け作業が大きく楽になります。
輸出志向企業・PEZA企業の視点
この0%と免税の区分は、PEZA登録企業をはじめとする輸出志向企業にとって、特に実務上の意味を持ちます。
CREATE法およびCREATE MORE法(RA 12066)の枠組みのもとでは、登録事業者が登録プロジェクトのために行う国内仕入について、一定の要件を満たすものはVAT0%(ゼロレート)で調達でき、輸入についてはVATが免除されます。これにより、登録事業者は仕入段階でのVAT負担を抑えながら事業を行うことができます。
なお、0%調達の対象となる国内仕入の範囲は、従来の「登録活動に直接かつ専ら使用される(directly and exclusively used)」という基準から、CREATE MORE法によって「登録活動に直接帰属する(directly attributable)」という、やや広い基準に整理されました。具体的にどの仕入が対象になるかは通達によって継続的に明確化が進められているため、適用にあたっては執筆時点の最新の取り扱いを確認することをおすすめします。供給する側から見れば、こうしたPEZA企業等への国内仕入0%は自社にとってのZero-Rated売上となり、対応するInput VATの還付という論点につながります。
誤適用のリスク
0%と免税の区分を取り違えると、税務上の指摘につながります。たとえば、本来は免税の取引であるにもかかわらずInput VATを控除してしまうと、その控除は否認され、追徴の対象になり得ます。逆に、Zero-Ratedの要件を満たしていないのに0%を適用してしまうケースも、後の税務調査で問題となります。
特にZero-Ratedの適用には、取引が0%の対象であることを示す所定の証明や認定が必要になる場合があります。PEZA関連の取引で求められるVAT zero-rating certificationはその一例で、こうした書類が整っていないと、0%の適用そのものが否認されるおそれがあります。
こうした誤りを避けるには、取引ごとに「課税(通常税率または0%)なのか、免税なのか」を正しく判定し、必要な証憑や認定書類を確実に備えておくことが欠かせません。証憑の記載要件については別記事「Invoice制度とVAT証憑管理」をご覧ください。
おわりに
Zero-Rated(0%課税)と免税は、Output VATが発生しないという見た目こそ似ていますが、Input VATを回収できるかどうかという点で明確に分かれます。0%なら回収可能な資産、免税なら回収不能な原価という違いは、コストやキャッシュフロー、そして税務リスクに直結します。自社の取引がどちらに当たるのかを正しく見極めることが、適正な申告と健全な資金管理の出発点になります。
VATの区分判定や輸出志向企業としての適用関係についてお困りの際は、お気軽に弊社までご相談ください。